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第二十九話 管理者権限

last update Last Updated: 2025-08-17 08:00:00

二十九話 管理者権限

全てが落ち着いて、休める環境を手に入れる事が出来た。その瞬間を見計らって、俺にアピールするように、言葉が出てくる。

【貴方はメモリアルホロウの王になりますか?

YES

NO】

初めてのパターンだ。分岐に選択肢が現れると書いていた事をログを見て確認をする。あの時は媚薬の効果で、よく見えなかったが、今なら確認する事が出来る。

俺の腹は決まっていた。自分の願いを込めながら指で選択すると、吸い込まれるように場面が土砂崩れのように、崩壊していく。壁が自分に当たりそうになった瞬間、反射的に目を瞑った。

【新しい世界へようこそ。ここはメモリアルホロウです。

貴方はNOを選択しました。願いを込められた貴方の選択は、全てのシナリオに影響を与えます。

シナリオ「対立する兄弟」クリアしました】

シナリオを達成する事が出来たようだ。しかし今までの仕様とは明らかに違う。基本、自分の視界に出てくる画面から情報を得れていたのだが、今回は少年の音声に変わっている。ロロンとは違うハスキーな声だ。あどけなさが残るが、喋り方からして男の子だと認識する事が出来た。

瞑っていた瞼を開くと、部屋に戻ったはずなのに、目の前に広がっている光景は、まるで舞踏会。今まではロロンが休憩所を確保してくれていたのだが、今回は違うようだった。

「どうなっているんだ?」

一体、何が起きているのかを把握しようと、辺りを見てみるが、何も情報は落ちていない。見た事のない光景に疎外感を感じながら、自分の時間軸が揺らぎ始める。

「やぁ。見ない顔だね。楽しんでる?」

「えっ……と。貴方は?」

見るからに少年のようなあどけなさを抱いている緑髪の青年は、にっこり微笑むと、俺の耳元で囁き始める。

「僕はギルバート。舞踏会を主催した者だよ。君の名前は?」

こういう場所に慣れているのだろう、まだ若いのに、紳士的に見える。見た目と声は幼いのに、体つきは大人だった。
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